2026.10.26 頭痛
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医
- 立ちくらみ・ぐるぐる・ふわふわは、体の中で起きていることが違います。
- ただし、感じ方だけで「耳か脳か」は決まりません。大きな手がかりは、めまい以外の症状です。
- ろれつが回らない、ものが二重に見えるなどを伴うときは、救急対応が優先です。
「立ち上がるとクラッとする」「朝起きたときにフワッとする」「雲の上を歩いているよう」「天井がぐるぐる回って吐いた」。こうした症状で受診される大人の方は少なくありません。
当院では、受診される方の主な訴えのうち、めまい・ふらつきが約2割を占めます。[出典:当院の診療実績・2023年1月〜2026年1月、12,985名中2,552名]
症状そのものより、「脳梗塞の前触れではないか」という不安を理由に来られる方も多くいらっしゃいます。この記事では、医師が見分けるときに見ているものと、受診の目安をお伝えします。

めまいの3つのタイプ
めまいは、感じ方で大きく3つに分けて考えます。ただし、下の「多い原因」はあくまで傾向です。
- 感じ方
- 立ち上がった瞬間に、目の前が暗くなる・クラッとする
- 多い原因
- 血圧や血流の変化が多い
- 感じ方
- 自分や周りがぐるぐる回る。吐き気を伴うことも多い
- 多い原因
- 耳の奥(内耳)の問題が多い。脳のこともある
- 感じ方
- ふわふわする。まっすぐ歩きにくい
- 多い原因
- 幅が広い(脳・耳・血圧・薬・筋力の低下など)
感じ方だけでは、原因は決まりません
「ぐるぐるは耳、ふわふわは脳」とよく言われます。しかし、めまいを専門とする耳鼻咽喉科の学会誌には、感じ方だけで見分けるのは危険だと書かれています。[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年]
脳の血管が詰まったときでも、ぐるぐる回るめまいで始まることがあります。逆に、耳の問題でふわふわと感じることもあります。
救急外来を受診しためまいの方のうち、
脳梗塞・脳出血だった割合
約10%
病院によって患者さんの層が異なるため、おおよその数字です。見逃してはいけない病気が、この中に含まれています[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年]
院長より
めまいと一括りにしても、要因は実にさまざまです。貧血や血圧の変動、内耳からくるめまいもあれば、脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など脳からくるめまいもあります。
頸椎や脊髄の病気、筋力の低下、精神的な要因でふらつく方もいます。
めまいの感じ方だけでは、耳なのか脳なのかは決められません。大事なのは、どのようなめまいなのか、めまいと一緒に何が起きているかです。当院では問診と診察に、採血や画像検査を組み合わせて判断しています。
この症状があれば、すぐ救急へ
見分ける大きな手がかりは、めまいと一緒に起きている症状です。脳が原因のめまいは、めまい以外の神経の症状を伴うことが多いとされています。[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年]
ただし、めまいだけで始まる脳梗塞もあります。初めての強いめまいが続くときは、受診してください。
めまいに、次の症状が重なっているとき
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- ものが二重に見える
- 片側の手足に力が入らない、しびれる。力はあるのに、うまく動かせない
- 顔の片側がしびれる・ゆがむ、飲み込みにくい、声がかすれる
- これまでにない強い頭痛や、後頭部・首の後ろの痛み
- まっすぐ立てない、座っていられない
- 突然始まった激しいめまい・吐き気で動けない
- 意識が遠のく、気を失った(胸の痛み・動悸・息切れがあれば、心臓の病気の可能性も)
- 黒い便や吐血がある
- 頭を打ったあと、または血液をさらさらにする薬を飲んでいる方の、急なめまい・頭痛
外来の予約ではなく、救急対応(救急搬送)が優先されます。
これらがなくても、めまいだけで始まる脳梗塞もあります。初めての強いめまいが続くときは、我慢せず受診してください。
難聴や耳鳴りを伴う場合は、耳が原因のことが多くなります。ただ、耳の症状があっても脳の病気が隠れていることがあるとされています。[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年]
立ちくらみと頭痛が続くとき
立ち上がったときに血圧が一時的に下がると、脳に届く血液が減ってクラッとします。これを起立性低血圧と呼びます。立ち上がってから数分以内に起こるのが特徴です。
外来で多いのは、この起立性低血圧と、緊張や痛みなどをきっかけに血圧が下がる迷走神経反射です。

大人の場合、背景として次のようなものがあります。
- 薬の影響:血圧の薬の効きすぎ(夏場や、食事の量が減ったとき)。利尿薬、前立腺の薬、糖尿病の薬の一部、睡眠薬など
- 食後・入浴後・飲酒後:高齢の方は食後に血圧が下がりやすく、長湯や飲酒のあとも起こります
- 脱水:夏場、発熱時、食欲が落ちたとき
- 貧血:気づかないうちの出血(黒い便など)が隠れていることがあります
- 自律神経の障害:糖尿病やパーキンソン病などに伴うもの
- 不整脈:意識が遠のく・気を失う・動悸を伴う場合は、心臓の検査を優先します(循環器内科)
頭痛と一緒に起きているとき
「立ちくらみと頭痛」で調べてこの記事にたどり着いた方へ。頭痛外来として、次の3つを確かめています。
- 立つと頭痛が強くなり、横になると楽になる:脳脊髄液漏出症(低髄液圧)という病気の可能性があります
- 片頭痛のある方の、繰り返すめまい:前庭性片頭痛と呼ばれ、片頭痛の治療で軽くなることがあります
- 貧血・脱水:頭痛とふらつきが一緒に出やすい状態です
中高生の場合は、起立性調節障害という別の枠組みで考えます。お子さんの立ちくらみ・頭痛の記事をご覧ください。
どこに相談するか
めまいの感じ方ではなく、一緒にある症状で振り分けます。
| 一緒にある症状・状況 | 相談先 |
|---|---|
| 立つ・起き上がるときだけ起こる/動悸・失神・黒い便を伴う | 内科・循環器内科 |
| 頭の位置を変えると数十秒ぐるぐる回る/聞こえにくさ・耳鳴りを伴う | 耳鼻咽喉科 |
| めまい以外の神経の症状/強い頭痛・首の痛み/歩けない/初めての強いめまいで高血圧・糖尿病・喫煙・心房細動がある/頭痛持ちの方の繰り返すめまい/高齢の方の徐々に進むふらつき | 脳神経外科・脳神経内科 |
| 上の「すぐ救急へ」の症状 | 救急 |
急に片耳が聞こえなくなった場合は、早めの治療が必要です。すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。
院長より
ご自身で振り分けるのは難しいと思います。迷ったときは、脳の病気を先に除外する意味で、脳神経外科を受診していただいて構いません。
耳が原因と分かれば、耳鼻咽喉科へご紹介します。良性発作性頭位めまい症の耳石を戻す治療も、紹介先でお願いしています。
当院での診察の流れ

- 問診いつから、どんなときに、どのくらい続くか。めまい以外の症状も伺います。
- 血圧の測定横になったときと、立ち上がったときの両方で測ります。
- 神経の診察眼の動き、手足の力、歩き方を確かめます。必要に応じて採血も行います。
- 必要に応じて当日の脳MRI脳が原因の可能性があれば、その日のうちに確認します。
当日のMRIを考えるのは、次のようなときです。
- めまい以外の神経の症状があるとき
- 初めての急なめまいで、高齢の方、高血圧・糖尿病・喫煙・心房細動などがある方
- 頭痛や首の後ろの痛みを伴うとき(血管の裂け目がないかも確認します)
- 体の揺れや歩きにくさが強いとき、耳のめまいとして典型的でないとき、長引くとき
- ご本人の不安が強く、確認することで安心につながるとき
脳梗塞の診断にはMRIが欠かせず、急ぐ場面でMRIを撮れる体制が必要だとされています。[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年(総説)]
ただし、発症して間もない小さな脳梗塞は、MRIでも写りにくいことがあります。当院のMRIは造影剤を使わない撮影です。
経過によっては日をあけて再検査をおすすめし、症状が変わったときはすぐに再受診していただいています。

ご自宅でできること
- 起き上がり方:寝た姿勢→座る→数十秒待つ→ゆっくり立つ。立つ前に足首を動かしたり、足踏みをしたりするのも有効です
- クラッとしたら、すぐしゃがむか座る:転倒を防ぐことが最優先です
- 水分をこまめにとる:ただし、心臓や腎臓の病気で水分を制限されている方は、主治医の指示に従ってください
- 塩分は自己判断で増やさない:高血圧の方が多いためです
- 熱いお湯・長湯を避ける:入浴後、飲酒後、食後すぐは急に立たないようにしてください
- 薬は自己判断で止めない:血圧の薬などを飲んでいる方は、家庭血圧(できれば立ったときも)を記録して、受診時にお持ちください

高齢の方のふらつき
最も気をつけたいのは転倒による骨折や頭のけがです。血液をさらさらにする薬を飲んでいる方は、軽く頭を打っただけでも、遅れて出血することがあります。
高齢の方のふらつきでは、次の病気を確かめています。
- 慢性硬膜下血腫:数週間〜数か月前の軽い打撲のあと、ふらつき・物忘れ・片側の脱力が出てきます。MRIですぐに分かり、治療で改善が見込める病気です
- 正常圧水頭症:小刻み・すり足の歩き方、物忘れ、尿失禁が特徴です
ほかに、睡眠薬・抗不安薬・降圧薬などの薬の重なり、夏場や食欲が落ちたときの脱水、パーキンソン病、頸椎の病気、視力や足腰の筋力の低下もふらつきの原因になります。受診の際はお薬手帳をお持ちください。
よくある質問
Q. めまいは何科を受診すればいいですか?一緒にある症状で変わります。聞こえにくさや耳鳴りを伴う場合は耳鼻咽喉科、動悸や失神を伴う場合は内科・循環器内科、脳が原因でないか確かめたい場合は脳神経外科が窓口です。迷ったときは脳神経外科で構いません。必要に応じてご紹介します。
Q. 立ちくらみだけなら、受診しなくても大丈夫?一時的で、ほかに症状がなければ様子を見てよいことが多いです。繰り返す、頭痛を伴う、意識が遠のく、動悸や胸の痛みを伴う、黒い便が出る、薬を変えてから始まった、という場合はご相談ください。
Q. MRIはその日のうちに撮れますか?診察のうえ必要と判断した場合、当日に撮影し、結果もその日にご説明します。発症直後の小さな脳梗塞は写りにくいことがあるため、経過によっては再検査をおすすめします。
まとめ
- 感じ方だけで「耳か脳か」は決まりません。
- 大きな手がかりは、めまい以外の症状と、必要に応じた画像検査です。
- ろれつ・複視・片側の脱力・強い頭痛を伴うときは、救急対応が優先です。めまいだけで始まる脳梗塞もあります。
「脳は大丈夫だろうか」という不安は、確かめることで、多くの場合は安心につながります。お気軽にご相談ください。
脳MRIをご希望の場合は、予約時に「めまいで当日検査希望」とお伝えください。
出典
[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年]小川恭生「中枢疾患によるめまい・平衡障害の診断と耳鼻咽喉科医の対応」日本耳鼻咽喉科学会会報 121(1):68-, 2018
[出典:日本耳鼻咽喉科学会の学会誌・2018年(総説)]小川恭生「めまいの鑑別診断:危ないめまいの見分け方」日本耳鼻咽喉科学会会報 121(12):1453-1457, 2018
[出典:当院の診療実績]当院の診療実績(2023年1月10日〜2026年1月29日・受診患者12,985名の主訴別内訳)
