2026.09.26 頭痛
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医
- 痛む場所は手がかりのひとつですが、それだけで原因は決まりません。
- 痛み方・続く時間・伴う症状を組み合わせて、国際的な診断基準に沿って判断します。
- 突然の激しい頭痛や、これまでにない痛み方のときは、部位にかかわらず早めの受診をご検討ください。
「どこが痛いか」だけでは病気は決まりません
「後頭部が痛い」「こめかみが痛い」——痛む場所を手がかりに調べる方はとても多くいらっしゃいます。

痛む場所は、たしかに重要な情報です。ただしそれだけで頭痛の原因を決めることはできません。
同じ「後頭部の痛み」でも、肩や首のこりに伴うものもあれば、まったく別の原因のこともあります。逆に、片頭痛では「あるときは片側、あるときは両側」と痛む場所が変わることもよくあります。
当院の診察では、痛む場所に加えて次の点をうかがい、国際的な診断基準「国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)」に沿って判断しています。
- 痛みの性状(ズキズキと脈打つ/締めつけられる/突き刺すような)
- 痛みのパターン(いつから・どのくらいの頻度で・どのくらい続くか)
- 伴う症状(吐き気、光がまぶしい、涙や鼻水、しびれ、ものが二重に見える など)
部位だけを見るのではなく、全体像を把握したうえで診断します。
部位ごとに、考えられること
痛む場所ごとに、まず何を考えるかを整理します。

①後頭部・首のうしろ
- 多くは首や肩の筋肉の緊張に伴うもの
- 突然起こった首のうしろ・後頭部の痛み(きっかけの有無は問いません) … 椎骨動脈解離に注意
- 電気が走る瞬間的な痛みのくり返し … 後頭神経痛
椎骨動脈解離は、首を通って脳へ向かう血管が裂ける状態で、脳梗塞やくも膜下出血の原因になることがあります。首を強く動かしたあとに起こることもあれば、きっかけなく自然に起こることもあります。後頭神経痛は、髪をとかしたときや枕に当たったときに響くのが特徴です。
②こめかみ・側頭部
- 片側がズキズキ脈打ち、動くと悪化 … 片頭痛
- 三叉神経痛や帯状疱疹のことも
- 50歳以降にはじめて出た痛み … 巨細胞性動脈炎に注意
帯状疱疹では、痛みが先に出て、発疹があとから現れることがあります。この段階では原因が分かりにくく、経過を追う必要があります。巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)は、こめかみを押すと痛む、髪をとかすと痛い、噛んでいるうちにあごがだるくなる、微熱や倦怠感が続く——といった症状が重なります。視力に影響が及ぶことがあり、早期の治療が重要とされています。
③目の奥・おでこ
- 15分〜3時間ほど続き、涙や鼻水を伴う … 群発頭痛
- 前かがみで強くなる … 副鼻腔の炎症
- 視界がかすむ・光の輪が見える … 急性緑内障発作に注意
群発頭痛は、目の奥がえぐられるように痛み、じっとしていられないほどになることもあります。急性緑内障発作は急激に眼圧が上がる状態で、早急な治療を要します。治療は眼科で行います。
④頭頂部・頭全体
- 帽子をかぶったように締めつけられる … 筋肉の緊張に伴う頭痛
- 朝に強く、起きて動くと軽くなる/日に日に強くなる … 早めに検査を
夕方にかけて強くなる、肩こりを伴う、という方が多い部位です。一方、朝起きたときに強く、起きて動くと軽くなる頭痛が続く場合は注意が必要です。横になっている間は頭の中の圧(頭蓋内圧)が上がりやすく、朝に強く出るためです。考えられるのは、脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・特発性頭蓋内圧亢進症・睡眠時無呼吸などです。日に日に強くなっている場合は、脳腫瘍など頭の中で場所をとる病変を疑います。当院では、神経の働きを確かめる診察(神経学的検査)で異常の有無を確認し、当日のMRI検査に進みます。
「痛み方」と「続く時間」からわかること
痛む場所と同じくらい、どんな痛みが、どのくらい続くかが手がかりになります。
ズキズキと脈打つ
- 心臓の拍動に合わせて響くような痛み
- 体を動かすと強くなる(階段の上り下りがつらい)
- 吐き気や、光・音・においがつらく感じられることも
締めつけられる・重い
- 「帽子をかぶったよう」「ハチマキで締められるよう」
- 動いても悪化しにくいのが、脈打つ痛みとの違い
- 肩や首のこりを伴う方が多い
突き刺す・電気が走る
- 数秒でおさまる鋭い痛みが、くり返し起こる
- 後頭部であれば後頭神経痛
- 顔面であれば三叉神経痛が考えられる
立ち上がったときに強くなる
- 立ちくらみを伴うことがある
- 中学生・高校生では、朝に強く午後に軽くなるパターンも
- 起き上がると悪化し、横になると軽くなる … 脳脊髄液漏出症のことも
診察では、あわせてこれらをうかがいます
痛みの強さ/鈍い痛みか鋭い痛みか/一度痛くなったらどのくらい続くか/ずっと同じ痛みか瞬間的か/くり返すか/波があるか
痛みをうまく言葉にできない方は多くいらっしゃいます。診察のなかで一緒に整理していきますので、ご心配はいりません。
→ 関連記事:朝起きられない・立ちくらみ・頭痛|起立性調節障害と、見逃したくない「頭の病気」
部位にかかわらず、早めの受診をご検討いただきたいとき
痛む場所に関係なく、次のような場合はご相談ください。
危険なサインの見分け方は、別の記事で詳しく解説しています。
→ 関連記事:危険な頭痛の見分け方|脳腫瘍・脳卒中を見逃さないサインとMRI検査
当院での対応

当院では、まず問診で「いつから・どこが・どんな痛み方で・どのくらい続き・何を伴うか」を詳しくうかがいます。そのうえで、国際的な診断基準に照らして頭痛のタイプを判断します。
頭の中の病気が心配される場合には、脳のMRI検査を当日のうちに撮影し、その日の診察で結果をご説明しています。
検査で緊急の治療が必要な状態が見つかった場合は、速やかに適切な医療機関と連携し、その日のうちにおつなぎします。
くり返す頭痛については、原因を確かめたうえで、生活への支障を減らすための治療をご相談します。
よくある質問
Q. 後頭部だけが痛みます。何が原因でしょうか。
A. 首や肩の筋肉の緊張に伴うものが多くみられますが、部位だけで原因を決めることはできません。とくに、首を激しく動かしたあとに痛みが出た場合や、電気が走るような鋭い痛みがくり返す場合は、別の原因が考えられます。突然の強い痛みの場合は、時間をおかずにご相談ください。
Q. こめかみが痛いのは片頭痛でしょうか。
A. こめかみは片頭痛の痛みが出やすい部位ですが、それだけで判断することはできません。実際には三叉神経痛だった方や、数日後に顔面の発疹が出て帯状疱疹と分かった方もいらっしゃいます。50歳を過ぎて初めてこめかみの痛みが出た場合は、血管の炎症(巨細胞性動脈炎)の可能性も含めて一度ご相談ください。
Q. 痛む場所が日によって変わります。問題ないでしょうか。
A. 片頭痛では、あるときは片側、あるときは両側と、痛む場所が変わることはよくみられます。ただし、回数や強さが以前より増えている場合は、経過を確認しておくほうが安心です。
Q. MRIを受ければ頭痛の原因はわかりますか。
A. MRIでわかるのは、頭の中に出血や腫瘍などの病気がないかという点です。片頭痛や緊張型頭痛のように、画像に写らないタイプの頭痛もあります。そのため、画像検査と問診を組み合わせて判断します。
Q. どのくらい様子をみてから受診すればよいですか。
A. 突然の強い頭痛や、しびれ・ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、様子をみずにご相談ください。それ以外でも、くり返す頭痛で生活に支障が出ている場合や、市販薬を月に10日以上使っている場合は、一度受診をご検討ください。
まとめ
- 痛む場所は手がかりのひとつですが、それだけで原因は決まりません。
- 痛み方・続く時間・伴う症状を組み合わせ、国際的な診断基準に沿って判断します。
- 突然の強い頭痛や神経症状を伴う場合は、部位にかかわらず早めにご相談ください。
「どこが痛いのか、うまく説明できない」という方も心配ありません。診察のなかで一緒に整理していきます。気になる頭痛が続くときは、一度ご相談ください。
脳MRIをご希望の場合は、予約時に「頭痛で当日検査希望」とお伝えください。
出典
国際頭痛学会「国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)」
