2026.08.27 頭痛
日本脳神経外科学会脳神経外科専門医・指導医

- 「朝起きられない」「立ちくらみ」「頭痛」は、起立性調節障害という自律神経の病気のことがあります。怠けではありません。
- 一方で、同じ症状の裏に片頭痛など別の病気が隠れていることもあります。
- 当院では症状の出かたを詳しくうかがい、必要に応じて当日の脳MRIで頭の病気を確認できます。
「怠けているのではないか」と悩まれている保護者の方へ
朝、何度起こしても起きられない。やっと起きても立ちくらみがして、頭が痛いと言う。学校に行けない日が続き、出席日数が足りなくなってきた——。
外来では、保護者の方からこうしたご相談をよくお受けします。そして多くの方が、「本当は怠けているだけなのではないか」という迷いを抱えていらっしゃいます。
先にお伝えします。起立性調節障害は、自律神経の働きに関わる身体の病気です。本人の気持ちの問題ではありません。

起立性調節障害とは
起立性調節障害(OD)は、立ち上がったときに血圧や心拍を調節する自律神経がうまく働かず、脳への血流を十分に保ちにくくなる病気です。思春期に多く、軽症を含めると中学生のおよそ1割にみられるとされています。
また、不登校の約3〜4割に起立性調節障害が関係しているとされています。学校に行けない背景に、身体の病気が隠れていることは少なくありません。
よくある症状
- 朝、なかなか起きられない
- 立ち上がったときに、立ちくらみやめまいがする
- 頭痛がする
- 疲れやすい、だるさが続く
- 動悸がする
- 午後になると元気になる
朝に症状が強く、午後になると軽くなる——これが起立性調節障害の特徴的なパターンです。午後や夕方に元気そうに見えることが、「怠けているのでは」という誤解を生みやすい原因でもあります。

本人は起きようと思っていても、身体がついてこないことがあります。時間帯によって自律神経の働きが変わるため、午後になると動けるようになるお子さんもいます。
同じ症状でも、別の病気のことがあります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。
「朝起きられない・立ちくらみ・頭痛」という症状は、起立性調節障害だけで起こるものではありません。
当院には、他院で起立性調節障害と指摘された方や、保護者の方が起立性調節障害ではないかと考えて受診されるお子さんがいらっしゃいます。実際に診察してみると、片頭痛の周辺症状をみていたというケースは少なくありません。
片頭痛は、単なる頭痛ではありません。脳が光・音・匂い・睡眠不足などの刺激に過敏になり、発作を起こす神経の病気です。痛みだけでなく、吐き気、めまい、倦怠感、集中力の低下といった症状が出ます。ですから、頭痛が少し良くなったからといって、すぐに普段どおり勉強できるとは限りません。
このほかにも、貧血、甲状腺の病気、不整脈などの心臓の病気、睡眠障害などが背景にあることがあります。まれではありますが、頭の中の病気が原因のこともあります。
起立性調節障害として治療を続けていても症状が変わらない場合、診断を見直す価値があります。当院では、頭の病気が隠れていないかを確認したうえで、頭痛そのものの診断と治療を行います。
当院の診察でみていること

当院では、次のような点を詳しくうかがいます。
症状の出かた
- 時間帯:朝に症状が強く、午後に改善するか
- 姿勢との関係:立ったときに症状が強くなるか
この2点は、起立性調節障害を考えるうえで重要な手がかりになります。
ほかの病気の可能性
同時に、貧血、甲状腺の病気、不整脈などの心臓の病気、睡眠障害といった内科的な病気が隠れていないかも確認します。
起立性調節障害の検査
起立時の血圧・脈拍を測定する新起立試験は、当院で実施できます。
脳MRIを検討する場合
頭痛を伴う場合、次のようなときには、二次性頭痛(別の病気が原因の頭痛)を除外するために頭部MRIを検討します。
- 朝方の頭痛に加えて、吐き気や嘔吐を伴う
- 手足のまひ、感覚の異常、見え方や視野の異常など、神経の症状を伴う
- 頭痛の性状が変わった(今までと痛み方が違う)
当院は院内にMRIがあり、当日の撮影から診察まで対応しています。
お子さんのMRI検査について

「MRIは眠らせないと撮れないのでは」とご心配される保護者の方が多いのですが、中高生であれば、まず問題なく鎮静なしで撮影できます。実感としては、5歳ぐらいから鎮静なしで撮影できることが多い印象です。
検査は横になって受けていただきます。放射線を使わないため、被曝の心配はありません。ご不安がある場合は、事前にご相談ください。
診断のあとは
当院で頭痛の治療が必要と判断した場合は、当院で継続して診療します。起立性調節障害としての治療や生活指導が中心になる場合は、必要に応じて小児科などへご紹介します。
当院は小児科の代わりになるものではありません。「頭の病気が隠れていないかを確認する」「頭痛の診断と治療を行う」という役割で、小児科の先生と並走する形をとっています。
ご家庭でできること
本人の意思だけではどうにもならない部分がある一方で、本人にできることもあります。治療と並行して、少しずつ取り組んでいきましょう。
- 水分と塩分を意識してとる
- 生活リズムを整える(就寝・起床の時間をなるべく一定に)
- 運動を無理のない範囲で続ける
- 睡眠を十分にとる
- 必要に応じて薬物治療を行う
片頭痛が背景にある場合は、光や音、睡眠不足といった発作のきっかけを避ける工夫も有効です。
お子さんの頭痛の診療実績
当院では、18歳未満のお子さんを749名診療してきました。直近1年では170名が新たに受診されています。年齢の中央値は13歳で、中学生248名・高校生263名と、学年が上がるにつれて増える傾向があります。
もっとも多いのは片頭痛(595名)です。また、大人の頭痛では女性が6割以上を占めますが、18歳未満の749名では女性50.7%(380名)・男性49.3%(369名)と男女差がほとんどありません。男の子の頭痛も、めずらしいことではありません。

※2023年1月10日(開院)〜2026年8月24日の当院集計です。初診時18歳未満の方を対象としています。複数の頭痛を併せ持つ方は、重複して計上しています。
費用について
川崎市の小児医療費助成は、2026年9月から高校生年代まで対象が広がります。あわせて、通院時の一部負担金(小学4年生以上・1回500円)も廃止されます。
川崎市の小児医療証をお持ちのお子さんは、MRI検査を含めて窓口でのご負担なく受けていただけます。
※高校生年代=18歳に達した日以後の最初の3月31日まで。所得制限はありません。川崎市以外にお住まいの場合は、各自治体の助成内容により異なります。
よくある質問
Q1. 起立性調節障害は何科を受診すればよいですか?
A. 小児科が中心となります。頭痛やめまいが強い場合、また小児科で治療しても改善しない場合は、脳神経外科で頭の病気が隠れていないかを確認するという選択肢があります。当院では診察のうえ、必要に応じて脳MRIを当日撮影できます。
Q2. 何歳から受診できますか?
A. 年齢の制限はありません。小学生低学年のお子さんの頭痛も数多く診療しています。
Q3. MRIは眠らせる必要がありますか?
A. 中高生であれば、まず問題なく鎮静なしで撮影できます。実感としては5歳ぐらいから鎮静なしで撮影できることが多いです。
Q4. 小児科で起立性調節障害と言われましたが、良くなりません。
A. 診断を見直す価値があります。実際に、起立性調節障害として経過をみていた方が、片頭痛の症状であったというケースは少なくありません。一度ご相談ください。
Q5. 保護者だけで相談に行くことはできますか?
A. お子さんご本人の診察が必要です。まずはお電話でご相談ください。なお、起立性調節障害のお子さんは朝に動けないこともありますので、朝の受診が難しい場合は午後の診療時間(14:30〜18:30)にお越しください。※木曜・土曜の午後は休診です。
Q6. 検査で何もなければ、どうすればよいですか?
A. 頭の病気がないと確認できること自体に意味があります。そのうえで、起立性調節障害としての治療や生活指導が中心になる場合は、必要に応じて小児科などへご紹介します。
まとめ
- 朝起きられない・立ちくらみ・頭痛は、自律神経が関わる身体の病気のことがあります。怠けではありません
- 一方で、片頭痛など別の病気が隠れていることもあります
- 診察では症状の時間帯・姿勢との関係を詳しくうかがい、内科的な病気も含めて確認します
- 必要な場合は当日の脳MRIで頭の病気を確認できます。中高生は鎮静なしで撮影できます
- 小児科で治療しても改善しないときは、診断を見直す価値があります
お子さんの頭痛やめまいでお困りの方は、一度ご相談ください。
予約時に「お子さんの頭痛の相談」とお伝えください。
出典
日本小児心身医学会「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」(小児心身医学会ガイドライン集 改訂第3版)
